これはもの凄い大発見だと私は大騒ぎしましたが、発見した当の川嶋先生は、平然としていました。
なにしろ、中国武術の発勁の構造を初めて科学的に解明したのですから、私としては大感激です。私は嘗て八極拳の本で、順式呼吸の発勁動作について発表しました。下腹部に息を吸い、蓄勢。発勁は、胸を張り、下腹が減っ込みます。逆式の発勁は、胸に息を吸い、下腹に落とします。前者が、フン(実際の発音にはコツがあります)後者が、ハの呼吸と呼ばれ、フンは主に横へ、ハは主に前に勁を発します。あ、今書いてることも本来は秘伝ですけどね。それを理解してないと川嶋理論の凄さがわかりませんから。
川嶋先生が壁に背をつけ、腹筋で膝を上げようとしますが表面の四頭筋が働き、力が弱い。誰かに膝を抑えられると足が持ち上がらない。しかし、胸を張り、腹をへっこまして、膝を上げようとする。なんと上がるのです。私も実験してみました。普通、腹筋を使った方が良いと誰でも思いますよね。問題はなぜそういう結果になるのか?川嶋先生は、表面の筋肉を使わない為、インナーマッスルが働くからだと分析しました。具体的には腸腰筋です。この筋肉が太く、背骨と足を結びつけているのですが、インナーマッスルは自分の意思で動かしにくい。それで自分の意思でコントロールできる呼吸を通し、強い腸腰筋に働きかける。八極拳の各動作だけでなく、太極拳の分脚やムエタイのミドルも中丹田をフルに使うのは、腸腰筋への働きかけがポイントだったんですね。武術がいかに科学的に合理的な動きをしていたのか、また明らかになってきました。まもなく、これらの研究成果を一冊にまとめてもらいますから、楽しみにしていて下さい。
腹筋で膝をあげても抑えられると上がらない。
中丹田を張り、下腹をへっこます。我我の順式の発勁動作と同じ。不思議にも、腸腰筋が作用し、抑えられても上がります。